電子契約サービスを比較していると、「送信料」という項目でつまずく方が少なくありません。契約書を1件送信するごとに発生するこの費用は、サービスによって100円台から200円台まで幅があり、同じ「送信料」という名称でも、実際には2倍以上の開きがあります。月額基本料だけを見て安いと感じても、送信料まで含めて計算すると総コストの印象が変わることも珍しくありません。この記事では、代表的な2つのサービスの送信料を例に、契約書の送信件数別に年間コストがどれくらい変わるのかを試算し、送信料を比較するときに見落としやすいポイントを整理します。
送信料100円と220円、何が違うのか
電子契約サービスの多くは、契約書を1件送信するごとに「送信料」と呼ばれる従量課金が発生する仕組みを採用しています。クラウドサインの送信料は1件あたり220円(税抜、税込242円)、電子印鑑GMOサインの送信料は本人確認方式によって異なり、立会人型が100円、当事者型が300円(いずれも税抜)です。同じ「送信料」という名称でも、金額に2倍以上の開きがあることが分かります。
この差は単なる価格設定の違いというより、各社が電子契約サービスをどのような位置づけで提供しているかという事業戦略の違いを反映していると考えられます。クラウドサインは電子契約サービス専業として、機能や実績を重視する設計になっている一方、電子印鑑GMOサインは立会人型の送信料を抑えることで、低コストで導入しやすい入り口を用意していると読み取れます。月間の契約書の送信件数が多い企業ほど、この送信料の差が年間コストに与える影響は大きくなっていきます。
月間送信件数別・年間コストの試算
送信料だけを単純に12か月分に置き換えると、月間の送信件数によって年間コストの差がどの程度になるかを試算できます。以下は、クラウドサインの送信料220円と、電子印鑑GMOサインの立会人型送信料100円を比較した場合の年間コストの目安です(いずれも税抜、月額基本料は含みません)。
| 月間送信件数 | クラウドサイン(220円/件)の年間送信料 | GMOサイン立会人型(100円/件)の年間送信料 | 年間の差額 |
|---|---|---|---|
| 月20件 | 52,800円 | 24,000円 | 28,800円 |
| 月50件 | 132,000円 | 60,000円 | 72,000円 |
| 月100件 | 264,000円 | 120,000円 | 144,000円 |
2026年9月時点、各社公式サイト・公開資料に基づく試算です。実際の請求額は課税方式やキャンペーン、契約プランによって変動するため、最新情報は各社サイトで確認してください。
月間の送信件数が20件程度であれば差額は年間3万円弱にとどまりますが、月100件を超えるような契約書量の多い企業では、送信料だけで年間14万円以上の差が生まれる計算になります。契約書のやり取りが多い業種、たとえば不動産の賃貸借契約や人事労務の雇用契約などを日常的に扱う部署では、送信料の単価が総コストに与える影響が無視できない規模になることが分かります。
立会人型と当事者型で送信料が変わる理由
電子印鑑GMOサインのように、同じサービス内でも本人確認の方式によって送信料が変わるケースがあります。立会人型は、契約当事者本人ではなくサービス提供事業者が本人確認に関わる役割を担う方式で、取引先はアカウント登録なしで契約書に署名できるため、導入のハードルが低く、送信料も比較的抑えられている傾向があります。当事者型は、契約当事者自身が電子証明書を用いて署名する方式で、電子署名法3条の推定効がより明確に働くとされる場面がある一方、取引先にもアカウント発行などの準備が必要になりやすく、送信料も高めに設定されている傾向があります。
電子印鑑GMOサインの場合、立会人型が100円、当事者型が300円と3倍の差があり、GMOサイン単体で見ても、どちらの方式を主に使うかによって年間コストが大きく変わることになります。契約の重要度や取引先との関係性に応じて、案件ごとに方式を使い分けている企業も少なくありません。当事者型・立会人型の基礎的な違いについては電子契約の仕組みで詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
送信料0円という選択肢もある
すべてのサービスが送信料を採用しているわけではありません。マネーフォワード クラウド契約は、公式サイトで送信料・保管料が0円であると案内しており、料金はサービスの利用者数に応じた個別設定になっています。送信料という単価そのものは発生しないため、契約書の送信件数が多い企業にとっては有利に働く可能性がある一方、月々の契約書件数が少ない場合でも、利用者数に応じた固定的なコストが発生する設計である点には注意が必要です。
WAN-Signのように、月額基本料を0円としたうえで送信料の従量制を採用しているサービスもあり、認印版が100円、実印版が300円という料金体系になっています。送信料の有無、そして送信料が発生する場合の単価は、サービスによって設計思想が異なるため、単純に「送信料が安いサービスが有利」とは言い切れません。自社の契約書の量と、今後の増減の見込みを踏まえて比較することが大切です。
契約前に確認しておきたいポイント
送信料の比較だけで電子契約サービスを選ぶと、見落としが生じることがあります。契約前には、少なくとも次の3点を確認しておくことをおすすめします。
- 月額固定費と送信料の合計で、自社の想定件数における総コストを試算すること。送信料の単価だけでなく、無料プランの範囲内に収まるかどうかも含めて確認します。
- 送信料の税込・税抜表記の違いを見落とさないこと。公式サイトの料金表では税抜表示が基本になっているサービスと、税込表示が基本になっているサービスが混在しているため、比較する際は税込・税抜のどちらの数字かをそろえて確認する必要があります。
- 立会人型・当事者型のどちらを主に使うかによって送信料が変わるサービスの場合、自社の契約でどちらの方式が必要になるかを事前に整理しておくこと。
送信料はあくまで電子契約サービスのコストを構成する一つの要素です。月額固定費、無料プランの上限、保管期間などの条件も含めて、料金体系の比較やサービス比較表もあわせて確認しながら、自社の契約書の量に合ったサービスを検討してください。数字だけを追いかけるのではなく、実際に無料プランやトライアルを使って操作性を試したうえで、最終的な判断をすることをおすすめします。
